君に届くまで


作品紹介
 
橋波(はしなみ)くらら は高校生。国語担当の気弱な教師、
花島(はなしま)みれい(25)が最近気になるので法律の許す限りの関係になりたいと思っています!
とりあえず愛を伝えて走って叫んでいろいろやってみるのでどうか先生、振り向いてください!

迫る生徒と逃げる先生のお話。
 
 
 
 
 
【君に届くまで】 
 
誰かは言った。
やらずに後悔するくらいならやって後悔する方が良いと。
私、橋波(はしなみ)くらら は考える。
華も咲き乱れる高校生。3年生になった今、後悔とかはないけど物足りたとも言い難い。

「女子高生らしいことはあらかたしたし……部活も引退したし後悔ないなぁ」

あるとすれば一つくらい。
恋をしなかったことだ。

「男子はたくさんいたはずなのにどれも同じカボチャにしか見えなかった……ごめん」

誰に謝っているかわからないけどそういうことで。つまり、私は三年間恋をしなかった。

「しなきゃいけないわけじゃないけど、ときめきとかなかったなぁ」

恋をすれば。なんて思ったりもしないけど、いい人生経験にはなれたと思う。やっぱり、恋はしたかった。

「……はぁ」
「あ、いたいた橋波さん」

ため息を吐きながら校庭を眺めていたら、後ろから話しかけられた。

「花島先生?」

国語教師の花島(はなしま)みれい 先生だ。
どうやら考え事をしている間に教室に一人になってしまっていたらしい。

「このプリント、返しておきたくて。よく頑張ってたわよ」
「あぁ、ありがとうございます」

わざわざ一人一人に返してるんだ……。律儀な先生だなぁ。

「こことここと、ここ。チェック入れてヒント入れておいたよ。そこ以外に分からないところあったらいつでも聞きに来なさい」
「分かり、ました」

優しくて教え方の上手な花島先生。生徒から人気者なのはいうまでもない。
私はというと特に興味はなくて、軽く相槌を打つ程度だったんだけど。

「先生、間近で初めて見た」
「うん?」

「好きになってもいいですか?!」
「え、ダメですけど」

即答……。ちょっとはドキッとしてくれてもいいのに。

「急にどうしたんですか? からかうならよそでしてください」
「か、からかってなんてないです! こう、ビビッと! ビビッときたんです!」

「それはたぶん気のせいよ」
「教え子の初恋そんないい笑顔で切り捨てないで?!」

いや、私も急すぎたなってちょっと反省してる。でも仕方ないんじゃないだろうか。急にきたんだもん。急に好きだって思ったんだ。

「お願い! 法律の範囲内でいいから付き合って!」
「そんなときめかない告白ますます嫌ですよ!」

ときめいたらいいんでしょうか。
ときめいてもらえたらこっちを向いてくれるのでしょうか。

「バラ……100本?」
「重いしトゲが痛いですしもっと違うところに情熱をかけなさい」

「じゃあどうしたら付き合ってくれるの?」
「どうしたって付き合う気はありません」

つめた。
「愛さえあれば歳の差なんて」
「どこぞのタイトルみたいなの出してこないでください。そもそも愛はないです」

むぅ。私はあるのになぁ。

「橋波さん、高校生活は決して無駄ではないです。きっとあなたにもっと素敵な方が現れますよ」
「そんな振るときのテンプレなんていらないから」
「テンプレって……」

はぁ。ビビッときたのに付き合ってくれないのかぁ。でもたぶんこんなに電流走ったような感じになるのはもうないだろうし……。

「くらら、花島先生」
「「うん?」」
「もう昼休み終わってますよ……」
「あ……」

そういえばここ、教室だったっけ。見渡せばクラス全員の目が私たちに注目していた。

「あ……う、な、いつの間に」
「花島先生」
「はひっ!」

先生の名前を優しく呼んで、手を握る。

「私は先生を好きになったので先生への愛を叫び続けたいと思うんですよ」

世界の中心とまではいかないけど、近いところで。

「でもそれじゃ、この狭い学校では迷惑になると思うので」

握った先生の手の甲へ、ちゅっと口付ける。

「早めに決着をつけたいのですがどうですか?」

ニコリと笑えばクラスの歓声が響く。決まった。
心の中でガッツポーズを決めながら先生へと目を向けると

「な、が、、う」
「え?」
「いいわけないでしょ早く諦めて!」

真っ赤な顔で捨て台詞をはいて教室の外へと走っていった。
いやいや、授業どうすんのさ。というかプリントも授業の時に返せばいいのに、ちょっと抜けてるよね。

「可愛すぎでしょ……好き」

今まで怠惰に過ごしてきた3年は、すべて今日のために用意されていたのかもしれない。
感じたことのないようなドキドキと高揚感に、これから楽しくなりそうなんてワクワクしている自分がいた。

「好きです! 花島みれい先生!」

届くかな。届くといいな。
クラスメイトの歓声を浴びながら、私は明日からどうアプローチしようかなんて考えていた。

おわり
 
 

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