眠れない日の夜に

眠れない日のよるに〜今日も眠れない私は何も考えずに目を閉じようと思います〜
【登場人物】
夕咲はしま……高校1年生。考え事が多く寝つきが悪い女の子。朝ごはんは和食派。
 
才藤はつめ……高校1年生。夜更かしが得意な女の子。少しだけ寝不足気味。
 
 
 
どっぷりと日が暮れてから、ゆっくり明日を待つ。
携帯のような文明の利器に触れることを我慢したんだ。今日こそはよく眠れることだろう。
 
「おやすみ……」
 
夕咲(ゆうざき)はしま はそっと目を閉じる。
明日は何をしよう。朝ごはんはたまご焼きを焼こう。ウインナーも添えて、サラダも一緒に。
 
「んん、お腹空いてきた……」
 
私にはひとつ悩みがある。
それは、明日のことを考えすぎてなかなか寝付けないこと。
幸せな悩みだとみんなは笑うがこれがなかなかキツい。
 
「授業中眠いしなんだか身体が毎日重いし、なんだか血のめぐりも良くない感じがするし……」
 
いいことなんてないんだよ。って、明日ちゃんと言い返さなきゃ。
 
「……また無意識に明日のこと考えちゃった…」
 
時計の針はもう3時。
あと3時間は眠れる。なかなかいいじゃない?
キリンなんて15分だよ?幸せじゃん。……って違う違う。私は寝るの!
 
「はぁ……はつめ、起きてるかなぁ」
 
同じクラスの才藤(さいとう)はつめ。
居眠りに悩んでた私を心配してくれた友達のひとり。
彼女は私の悩みを聞くと言ってくれた。
 
「はしまが眠れなくなったとき、どれだけ夜遅くても朝早くても、電話してくれていいよ」と。
 
でも流石にこの時間……はつめも寝てるんだろう。なんか、それはものすごく悪い。
友達の快眠を乱す行為は私にはできないや。
 
「はー、寝よ寝よ」
 
掴みかけた携帯を置いて、また布団に入る。あぁもう、身体は眠たいのに。
 
「……え?」
 
不意に聞こえる着信音。
思わず飛び起きてしまった。
 
「……はつ、め?」
『出るの早いね、はしま』
 
もしかしなくても起きてた?なんて聞かれて、見えるはずもないのに首をブンブンと縦に振ってしまった。
 
「はつめ、どうしたの?」
『んー、はしまが寝れないんじゃないかって』
「えっ、なんで分かったの?!」
『はは、ほんとに寝れてなかったんだ。なんとなくだよ』
 
優しいはつめの笑い声。
はつめは眠たくないのかな。
 
『私もあんまり寝付きは良くなくて。だから、付き合ってよ』
「そうなの? なんか意外だね」
『えー? そうかな』
「そうだよ、だってはつめは頭いいもん」
『そこなんだ……』
 
カーテンからのぞく暗い空。
静かな空間と、微かに聞こえる虫の声。
ぜんぶ、二人だけのものみたい。
この空間には私しかいないのに、変なの。
 
「ねぇはつめ」
『うん?』
「今日はとびきり美味しいお弁当作るから。ちょっと味見してよ」
『……しょうがないなぁ』
 
暗い空の下、数ある中の一つの空間で。一人で眠れない夜を過ごすこと。それはとても寂しくて、少しだけ不安なものだ。
 
「はつめ」
『なぁに、はしま』
 
だから今は、この声が心地良い。
 
「はつめの声、好きだよ」
『……なに急に』
「へへ、ありがとう」
 
おかげさまで。
今日はゆっくりと眠れそうだ。
時計の針は4時30分。まだ、2時間半も眠れるんだから。
 
「ありがとうはつめ、おやすみ」
『はい、おやすみ』
 
通話ボタンを切りながら、私はそのままゆっくりと。
 
眠りに落ちていった。
 
 
 
☆☆
 
カタンと携帯を机において、ため息を吐く。
 
「なんなのあれ……ずるいでしょ」
 
誰に聞かせるわけでもない言葉を、静かに吐き出した。
 
一生知らなくてもいいことがあるとするなら、まさに。
はしまのためにしている、この私の努力だ。
 
「昼寝で寝溜めして、夜ははしまが眠るまで付き合うこと」
 
人間、寝溜めはできないらしい。
だからきっとこんなことを続けていたらいつか身体に影響が出るんだろう。
……関係ないけどさ。
 
「はしまが笑ってくれるなら……私は」
 
いつでもはしまの相手になろう。
はしまが眠るまでずっとずっと、起きててあげる。
 
「……おやすみ」
 
でも、これだけは言わせてほしいんだ。
 
 
 
「……はしまの、どんかん」
 
 
 
 
おわり
 
 

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