知らないくせに

[人物紹介]
白鷺つもり(しらさぎ)……高校一年生。スキンシップは幼なじみにしか取らない距離感の女の子。
 
大宮はじめ(おおみや)……高校一年生。スキンシップが多い距離感近めな女の子。
 
 
 
 
【知らないくせに】

好きだって言ったら、付き合ってくれるの。
そんなこと、あるわけないのに。
 
白鷺つもりはため息を吐いた。
幼なじみで同級生、大宮はじめが鈍いからだ。
 
手を繋いでも、顔を近づけても、抱きしめてもニコニコしながら「私のことそんな好きなの?」なんて聞いてくる。
 
「はじめって何されたらドキドキすんの?」
「別に何されてもドキドキしちゃうけどなぁ」
「うそつけ」
「うそじゃないってぇ、何なの急に」
 
何なのと聞かれたら、何も言えないわけだけど。
まぁそりゃ長年の付き合いがある友人から、まさか好意を向けられてるなんて思わないか。
 
「何もないですよーだ」
「つもりってたまに変なこと聞くよね」
 
別にこの想いが伝わらなくても、はじめと一緒には居られるんだろうけど。
“特別”が欲しくなるなんて人間はつくづくワガママだ。
 
だってはじめは、誰にでも優しいから。
 
「明日は誰と会うの」
「え、明日は特に誰とも」
「じゃあつもりと遊んでくれる?」
「いいけど……どうしたの」
「いいじゃんなんでも」
 
目を逸らすと頭を撫でて、いつものようなニコニコ笑顔。あぁ、こんなとこも好きになったんだよなぁ……。
 
「つもりは本当に私のこと好きだよねぇ」
「……好き」
「お、素直だ」
 
うるさい、ニヤニヤするんじゃない。
ずっと好きなんだってば鈍感バカ。そんなのも知らないくせに、抱きしめてくるな。
 
「うぅ〜……」
「あはは、くすぐったいってば」
 
いつまで経ってもこの気持ちは気付かれなくて。
言うのなんて絶対無理だ。
同い年なのに、はじめばかり先に行っちゃうんだ。
 
「私もつもりが大好きだよ」
「……ふん」
「ここで拗ねるのは違くない?」
 
つもりが言えない言葉を、そんな簡単に言わないで。
 
嬉しくなってる自分が、バカみたいじゃないか。
 
 
 
 
 
 
おわり
 
 
 

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